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vol.09 会社を円滑に引継ぎ、業績を伸ばすヒント

後継社長が押さえておくべき 会社引継ぎの鉄則を知っておこう

中小企業の事業承継で最も多いのが、自分の子供に会社を引き継ぐこと。ボデーショップでもそうした承継が多数派ではないでしょうか。しかし、指名された 後継者は、経営手法や銀行や取引先などとの対外的な付き合い、従業員との関係などで、少なからず悩みや不安を抱えるものです。
今回のレポートでは、自身も中小企業の後継者である株式会社宝輪の蕪竹理江社長に、後継社長にありがちな問題を解決するために知っておくべき鉄則を聞きました


先代社長と比べられる苦悩
違いを分析して独自のスタイルを確立

後継社長が最初に悩まされたり、意識してしまうのが、先代社長と比べられることです。特に先代にカリスマ性があったり、従業員に慕われていたりした場合、本人も同じような社長像を目指さなければならないと焦ってしまいがちです。しかし、そうした思い込みは無用なプレッシャーやストレスとなり、押しつぶされてしまうことになりかねません。
周囲が比較することは致し方ないと開き直り、取るべき行動は自分と先代の違いを明確にすることです。つまり、先代が得意なこと、苦手だったこと、自分の強みと弱みを分析し、自分が社長としてやるべきことをはっきりさせるのです。

例えば、先代は事業を広げることが得意な反面、一つひとつの事業を管理してブラッシュアップするのが苦手。反対に自分は事業を磨いて収益や効率をアップさせるのに向いていれば、先代が種をまき、芽吹いた各事業に対し、水や肥料をやってさらに伸ばすことに自分独自の役割を見出すことができます。あるいは、先代が弱みを見せないタイプで、自分は逆に全てをオープンにする性格であれば、むしろ弱みを見せて、従業員と一緒に悩み、力を借りて一緒に成長していくというのも一つのあり方です。

先代の思いや判断基準を聞いて明文化理念に沿った経営で従業員の心を掴む

しかし、変えない方が良いものもあります。それが会社の理念です。創業の精神や大切にしてきたことまで一気に変更しようとすると、これまで支えてきてくれた従業員から反発を招く可能性が高いからです。 まずは、「何を理想にしてきたか」「判断基準は何か」「取引先とはどのような付き合いをしてきたか」などを先代から丁寧にヒアリング。そして、その考え方を明文化することが重要です。それが、後継社長が理念を理解することにつながり、その理念に沿って会社を運営すれば、先代のやり方に慣れた従業員の協力も得やすくなるというわけです。

"数字"を制するものは経営を制す
儲かる仕事を増やし、赤字は撤退する

また、後継社長は"数字"が読めること、つまり財務諸表を読み解けることが必須条件です。中小企業の経済環境が厳しい今、自社の事業のどこが儲かっていて、どこが赤字なのかを細かく知り、合理的に経営判断しなければ、生き残ることは難しいからです。逆に数字を制することこそが経営の主眼の一つといえます。
会社を存続させるには利益の確保が不可欠です。利益は売上から支出を引いたものなので、特に支出の部を徹底的にチェックし、削減する努力は重要です。ボールペン一本、メモ帳一冊、紙一枚など、より細かい無駄遣いほど、口うるさく言うべきです。「細かい社長だ」と思わせることができれば成功です。従業員は意識して細かい経費を節減してくれるようになります。

例えばボデーショップでいえば、修理や整備など一作業ごとに売上・支出・利益を細かく計上し、どの取引先、どの車種、どのカテゴリーに儲けが出ていて、どこが赤字なのかを、正確に把握することが必要です。そして、儲けが伸びている領域は力を入れ、赤字が続く領域は大胆に廃止します。そうやって数字に基づいて経営をダイナミックに動かすことが、今の後継社長が会社を潰すことなく、成長させられる道なのです。

威厳を保つための命令口調は反発のもと古参の従業員とうまくやるコツとは?

後継社長にとっては、先代を支えてきた古参従業員と、どのように接していくかも課題でしょう。ベテランのメカニックに指示を出す場合、先代より未熟だと思われないために威厳を保とうと、「これをやって」「あれをやって」と、つい命令口調になりがちです。まだ経営者として実績がない後継社長がそうした態度で接すれば、不満や反発を招いてしまいます。
古参従業員に自分が言うことを聞いてもらうために必要なのは「命令」ではなく「誠意」です。長年会社を支え続けたことに感謝し、敬意を払い、それを言葉や態度で示します。普段からそうやって礼を尽くしていれば、仕事の依頼も円滑に受けてくれるはずです。

それでもなかなか動いてくれない場合、ものをいうのが数字です。例えば、新しい修理方法や機材の導入に了解を得られない時、今までのやり方を踏襲した場合の損失と新しいやり方により生じる利益を数字で示し、説得するのです。あるいは、赤字の事業を撤退することに反対されている場合も、続けたら会社はどうなるかを数字で示し、理解を促します。数字は有無を言わさぬ説得力を持っています。数字を示すことで、どんなに意見が合わない古参従業員も合理的に納得させ、動かすことができる可能性が高まるわけです。

銀行マンには私的な話と小さな恩で対応大切なのは、複数行と接点を持つこと

資金繰りのために銀行との信頼関係を深めることも後継社長の仕事です。心がけたいのは、担当の銀行マンが来社したら、仕事だけでなくプライベートな話をしたり、時には自分の弱みも見せるなど、人間味のある付き合いをすること。しばらく顔を見なかったら銀行に会いに行くのも良いでしょう。彼らが貸したいタイミングで少額でも融資に応じたり、有益な情報を提供するなど、小さな恩をたくさん売っておくことも、いざというときのためには重要です。

さらに、複数の銀行とつながりを持っておくことも有効。銀行は地域の様々な情報を握っており、複数と付き合いがあれば、それだけ多くのルートから同業他社や取引先、その他の有益な情報を掴むことができるからです。資金が必要な時も、最も好条件を提案した銀行から融資を受けたり、メインバンクの対応が悪ければ他行への切り替えもスムーズにできます。こうして銀行との接点を自分なりに築いていくことも、後継社長にとっては重要なポイントといえるでしょう。

本レポートは、三重県で物流、不動産賃貸、ガソリンスタンド、自動車整備業を展開する株式会社宝輪を先代から28歳の若さで継いだ女性社長、蕪竹理江さんに話を聞き、主に20~40代の若手後継社長の不安や悩みを解決することを目的にまとめました。蕪竹さんは、後継社長が知っておくべきことを記した著書(右)も執筆。本レポートで紹介したポイント以外にも役立つ情報が満載です。ぜひ一読して参考にしてください。

蕪竹理江氏の著書

『中小企業の「後継社長」が知っておくべき会社引継ぎ50の鉄則』(幻冬舎メディアコンサルティング/1,300円+税)

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