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コロナ禍でもボデーショップを明るくする

"気遣い力"を使って 意思疎通を円滑にしよう

新型コロナウイルスの影響で、生活や仕事が制限される中、現状や先行きがどうなるのか、不安を抱えている方も多いと思います。しかし、こうした中でも、お客様に対する接客、あるいは社内でのコミュニケーションに気を付けることで、ボデーショップの印象や職場の雰囲気を良くすることができます。どんなことに注意すればよいのかを、「気遣い力」に関する企業研修を主催し、著書も多数に上る、講師・コンサルタントの三上ナナエさんに聞きました。


少しの不安が疑問につながる社会情勢普段以上に身だしなみや挨拶が大事

今回のパンデミックは影響の長期化が予想され、先行きが不透明な中、しばらくの間、普段よりもナーバスになったり、言葉遣いに敏感になる方が増える可能性もあります。そうした中、相手とコミュニケーションを図る場合は、いつも以上に見た目や言葉に配慮する必要があります。少しでも不安に感じる点があると、「大丈夫だろうか」と疑問を持たれやすいからです。
まず接客では、基本として、身だしなみや姿勢、しっかりした挨拶、素早い出迎えを普段以上に心掛けることが大事。店内の整理整頓や従業員同士のやり取りも違和感が持たれないように配慮が必要です。これらがきちっとしていればお客様は安心できますが、ちょっとでも問題点があると疑問に感じやすく、「修理は大丈夫だろうか」とあらぬ誤解を与えかねません。

接客では相手の話し方に"似せる"質問には先に結論を答え、詳細は後付けに

話す際は、相手のコミュニケーションスタイルもよく観察しましょう。そして、相手の話し方に"似せる"のです。早口の方であればテンポ良く、大きな声の方にははきはきと。人は自分と同じような話し方の人には安心感を持ちやすく、「仲間、味方である」という認識のスイッチが入ると言われています。話す調子を合わせることがコミュニケーションをスムーズにするのです。
質問への受け答えも気遣いが必要です。例えば、「料金はいくら?」と聞かれた場合、修理方法別の料金プランを長々と説明するのは避けたいところ。「いくら~いくらのプランがあります」と最初に料金のレンジを示し、その後に各プランの説明をする流れが理想です。あるいは、「直せるか」と聞かれた場合は、先に条件や根拠を話すのではなく、最初に「できます」と、聞かれたことに直球で答えるのが望ましいです。こうして結論を先に、詳細な説明や理由は後付けにすると、不安感を抱えたお客様のいら立ちをあおらずに済みます。

接客では相手の話し方に

お客様の話すことをすぐに否定しない一度受け止めてから説明、提案する

相手が言うことを、すぐに否定しないことも重要です。仮に、ライトの修理で「小石が飛んできて割れた」と説明を受けたとした場合、プロから見て「その可能性はない」と思うこともあるでしょう。しかし、否定も肯定もせず、一度は「そうなんですね」と答えるか、何も言わず単にうなずいて、受け止めることが大切です。お客様が誤解されているのであれば、話を全て聞いた上で、プロとしての見方を説明して勘違いを解き、修理の提案を行います。
お客様は、「自分の考えをちゃんと聞いてもらった上で、プロの提案を受けて、決断した」というプロセスを経ることができ、納得感を得やすくなります。その意味で、最初の段階では、お客様が言いたいことを全部話していただき、聞く割合を増やすと良いでしょう。

社長から報連相し、情報を吸い上げる若手には「できていること」から指摘

一方、社内では、社長が積極的に部下の話を聞く機会を設けることが重要です。そのために有効なのが、通常とは逆に社長の方から部下に「報連相(報告・連絡・相談)」を行うこと。社長から「こんなことがあった」「こんなことに困っている」と言うと、それを真似て部下も報連相がしやすくなり、コロナ禍での困りごとなどの情報を、早めに吸い上げられるからです。
また、「困っていることがあれば教えて」と聞くのも一つの手です。「言ってみろ」では言いにくいですが、"教えて"ですと、柔らかいニュアンスになり、悩みや組織での問題を相談しやすくなります。
さらに、若手社員の教育では、できていないことではなく、まず、「できていること」を認めるのが大切。例えば、「仕事のスピードが速くなり、仕上がりも良くなった。"あとは"小さなミスが無くなれば良い」などです。"けれど"(But)ではなく、"あとは"(And)と肯定的につなぎ、できていないことを前向きに取り組めるように促す会話の組み立て方もポイントです。

挨拶プラスアルファで情報共有が促進小さな変化に注意し、嫌がることを回避

社員同士では、「おはよう」の朝の挨拶に加えて、プラスアルファの一言で、情報交換のきっかけを掴むことも有効です。「昨晩は遅くまでお疲れ様」などちょっとした言葉を足すと、「そういえば、先日お客様がこんなことを言っていた」「こんな出来事があった」と、話をつなぎやすくなり、情報共有が容易にできます。挨拶だけだと忙しそうと思われがちですが、一言付け足すだけで少し余裕がありそうに見えて、相手が会話をしやすくなるわけです。
同僚同士で小さな変化に注意を向けることも大事。元気がない様子であれば「何かあった?」と声を掛けるなど、平時なら見過ごしていた小さな変化も、積極的に口に出すことが肝心です。こうして"気遣いの量"を増やすことが、互いの体調を確認し合う手段となり、引いては事故の防止にもつながります。
加えて、意識したいのが、相手が嫌がるコミュニケーションを避けること。作業や指示で、細かく言われるのを嫌う人にはポイントだけを説明し、逆に詳細な話が無いと戸惑う人には、丁寧な説明をする。そうして、互いに少しでもストレスを減らす気遣いをすることが、コロナ禍の仕事の重要な秘訣なのです。

本レポートは、ANAで客室乗務員として乗務する中で「気遣い、気配り力」を見出し、退社後、接客やコミュニケーション向上、ビジネスマナーのセミナー講師として活躍する、三上ナナエさんに話を聞き、まとめました。三上さんは年間100回以上の企業研修を実施し、受講者は官公庁、商社、大学などを含め、1万4000人以上。ベストセラー『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎/税込1540円)や『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです』(大和出版/税込1650円)など著書多数。

『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです』(大和出版/税込1650円)

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