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地域密着のボデーショップだからできる

SDGsに率先して取り組み自社と地域の存続につなげよう

最近、SDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉を聞く機会が増えています。Sustainable Development Goalsの頭文字を取った言葉で、日本語訳は「持続可能な開発目標」。具体的に設定した17個の目標を達成することによって、世界が抱える飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動による自然災害などの諸問題を解決しようというのがその中身です。ボデーショップにとっても実は、自社の事業存続のために決して無関係ではいられない話です。具体的に何をすればよいのかを、SDGs支援の専門家、泉貴嗣氏に聞いてまとめました。

SDGsに率先して取り組み自社と地域の存続につなげよう

SDGs に取り組まないと将来が危うい?率先した活動で自社の事業の存続を図る

SDGs で設定された17 個の目標は、下の表で示す通りです。国連サミットで全会一致で採択され、先進国も含めて全ての国が行動し、人も企業も参画することが求められています。企業におけるポイントは、規模の大小に関わらず、それぞれができる範囲で役割を担う必要があるということです。なぜなら、SDGs に取り組まなければ、将来的に自社の事業の存続が危うくなるリスクがあるからです。

近年、温暖化などが原因で日本でも大きな風水害が多く発生し、企業の拠点が被災して事業がストップする事態も散見されます。貧困や少子化は日本でも進み、顧客の購買力の低下、市場の縮小を招き、ボデーショップのビジネスに少なからず影響を与えているでしょう。また、仮に違法な残業が続けば、従業員の健康を害するだけでなく、訴えられ、企業名が公表されるなど社会的制裁を受ける可能性もあり、防止は不可欠です。SDGsに対し、たとえ事業規模は小さくてもできることに取り組み、そうした活動の積み重ねによって、環境問題・社会問題を解決していくことが、実は、長く、広い目で見れば、自社の事業を持続させることにつながるという視点が非常に重要なのです。

SDGs に取り組まないと将来が危うい?率先した活動で自社の事業の存続を図る

SDGs 活動はまずは社内、次に社外労働環境の是正も目標への貢献となる

ボデーショップで導入する際は、17 個の中で、貢献できる目標は何かを考えてみることから始めましょう。重要なのは、まずは社内の環境問題・社会問題を抑制すること。その後、社外のSDGs 関連の課題に取り組むという順番を意識することです。社内では、例えば、従業員の健康を守るために労働環境の是正を図ることは、目標3 の「すべての人に 健康と福祉を」や目標8 の「働きがいも 経済成長も」につながります。自社ができること(リソース)を改めて棚卸しして、「ここはもう少し改善できる」と、一歩ずつより安全面や快適性を追求していく地道な取り組みによっても、SDGs への貢献は可能なのです。

SDGs 活動はまずは社内、次に社外労働環境の是正も目標への貢献となる

中古パーツを積極的に使うことも有効地域の業者と取引することで環境保全

そうして、社内での実践をスタートさせた後は、社外にも目を向けてみましょう。中古パーツを仕入れて修理に活用することは、顧客視点では料金を抑えることができる施策ですが、資源の有効活用という意味では、目標12 の「つくる責任 つかう責任」に当たり、より積極的に行うことはSDGs対策となります。新品を含めたパーツを、できるだけ近場の業者から納入することも、運送にかかる燃料が低減され、CO2 の排出抑制によって、目標13の「気候変動に 具体的な対策を」への貢献になります。こうした細かい点を再考し、できるだけ環境負荷が抑えられる施策を一つずつ積み上げていくことが、SDGs では大切なアプローチです。

中古パーツを積極的に使うことも有効地域の業者と取引することで環境保全

ボデーショップは地域のSDGs に貢献企業内保育所で広範な目標に寄与できる

社内外で活動を進める中で、SDGs に則する異業種の事業を始めることも一案です。SDGs とは簡単に言えば、「世の中の困ったこと(ニーズ)」の集合体であり、その解決を図る活動そのものが、実は新しいビジネスになり得るのです。特に地域密着型で事業を進めているボデーショップは、地場のSDGs に貢献することが有効でしょう。例えば、自社や周辺にある会社で子育て中の女性向けに、企業内保育所を開設する新規事業です。子供を預けることができ、シングルマザーなどが安心して働ける環境を提供できれば、目標1 の「貧困を なくそう」や目標5 の「ジェンダー平等を 実現しよう」に寄与できます。保育所付きのボデーショップであることで、フロントや修理・整備業務で女性の採用が促進されるなど、人材難の改善も期待できます。地域に貢献することで、目標11 の「住み続けられる まちづくりを」の支援にもつながります。

ボデーショップは地域のSDGs に貢献企業内保育所で広範な目標に寄与できる

他の企業や行政の"他力"も活用する 所有地が広いからこそ可能な様々な施策

さらに、自社だけで行うのが困難であれば、地域の企業に出資や支援を依頼したり、行政から補助金や助言を得ることも一つの道です。こうして"他力"を使って実現することは、目標17「パートナーシップで 目標を達成しよう」にも通じます。地域で保育所を開設することだけでも、非常に広範なSDGs 対策となるのです。

保育所をアイデアとして挙げたのは、ボデーショップは広い土地を所有している場合が多く、有効活用できる余地があることも理由です。保育所に限らず、地域の人が交流できるカフェ、貧困家庭の食事を支援する子ども食堂など、目標1 や目標11 に資する様々な事業が考えられるでしょう。

SDGs の取り組みは外部に積極的に発信若年層の評価が高まり採用に好影響も

こうした自社のSDGs の活動は、外部に積極的に発信していくことも重要です。ウェブサイトやSNS で定期的に伝えたり、デジタルが苦手な場合は、チラシやミニコミ誌、町内会報などアナログの手段で報告する方法もあります。

SDGs の活動を発信し続けていると、地域の人々が「あのボデーショップは環境や社会の諸問題にしっかり取り組んでいる」と見るようになり、イメージアップにもつながります。特に、学校でSDGs に関する教育を受けてきている今の若者世代に印象が良くなり、売り上げ向上や人材獲得の面でも有利になることが期待できるでしょう。

今回のレポートは、長年、企業や自治体向けのCSR(企業の社会的責任)施策の制度設計に携わり、現在はSDGs施策に関して中小企業への支援やアドバイザーを務める、泉貴嗣氏に話を聞きまとめています。泉氏の著書『やるべきことがすぐわかる!SDGs実践入門 中小企業経営者&担当者が知っておくべき85の原則』は、SDGsとは何か、何をすればよいかが手に取るようにわかる解説書であり、ご一読をお薦めします。

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