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商品やサービスは“売ってはいけない”

質問型営業を取り入れて売り上げを伸ばそう

商品が思うように売れない、新しいサービスが伸びない――。売り上げアップのために様々な施策を行っているものの、結果が出ず、頭を悩ませている経営者は少なくないかもしれません。なぜ売れないのかといえば、それは商品やサービスを「売ろう」としているからです。そうではなく、顧客の方から「買おう」と言っていただく営業ができれば、成約率は飛躍的に高まります。では、どうすればできるのか。それを実現するのが、数々のトップセールスを育ててきた営業コンサルタント、青木毅氏が開発した「質問型営業」です。

質問型営業を取り入れて売り上げを伸ばそう

説明型営業では顧客は引いてしまう

新車や中古車、エンジンオイル、タイヤ、その他のパーツ、あるいは車体や窓ガラスのコーティングなど、車の修理や整備以外にも、様々な商品・サービスをトータルで提供するボデーショップはあるかと思います。それらを目的に来店する顧客も少なくないでしょう。そうした顧客に対して、店側でよくある接客は、最初から商品やサービスの説明をしてしまうことです。「こちらが最新の機能を搭載した今イチオシのモデルです」「従来とは仕上がりが段違いの窓ガラスのコーティングサービスを始めました」など、つい売り込みをかけてしまうやり方で、これを「説明型営業」といいます。こうした従来のセールスの方法では、多くの顧客に引かれてしまい、結局思うように売り上げが伸びない事態に陥る可能性もあるでしょう。

では、どのようにすれば顧客に買っていただけるのでしょうか。それをかなえるのが「質問型営業」です。読んで字のごとく、顧客に対して、セールスの間、とにかく質問を次々と行っていくのです。どういうことなのか、一例を挙げて見てみましょう。

質問を繰り返せば思いが見えてくる

例えば、入店時、顧客から「車の購入を検討している」と言われたとします。その場合、最近入荷した燃費が良い車や最新式の安全性能を備えた車を案内したい気持ちをぐっとこらえて、まずは「なぜ、車を買いたいとお考えですか」と質問をするのです。仮に、「今の車は 10年乗っていて、そろそろ買い替えかなと思って」と返答が来たら、「特に、お車に望まれていることは何ですか」と、また質問します。すると、「今の車は燃費が悪くてね。今度は燃費が よい 車 だといいんだけど」や「もっと安全性の高い車の方がいいのではと思って」など、思いや考えが見えてきます。

そこで、「ということは、もし非常に燃費の良い車があればどうですか」や「より安全性の高い車があるとしたら、どうですか」とまた質問します。それに対して、「そうした車であれば欲しいと思う」と返答が来て、そこで初めて「そんな車がありますよ。実は先日入荷しまして...」と、商品を紹介するフェーズに入るのです。

質問を繰り返せば思いが見えてくる

人は自分が思ったりにしか動かない

このやり取りを見て分かる通り、店側は質問しかしていません。質問をすることによって得られる効果は絶大です。まず、相手の現状が分かります。今使っている車は燃費が悪かったり、安全性能に不満があったりするという現状です。そうした現状は、欲求の裏返しです。すなわち、現状を解決してくれる車こそ、顧客が求めている車というわけです。

ただし、そこで店側から勧めることはしません。「そうした不満や課題を解決してくれる車があったとしたらどうか」と、さらに顧客側に思いを尋ねるのです。なぜなら、「人は自分が思った通りにしか動かないもの」だからです。顧客の口から「そうした車が欲しい」と言っていただくことが重要で、その自ら発した思いが購買へと動かす原動力になるのです。

大切なのは顧客の思いを聞き出すこと

その他にも色々な質問の仕方があるでしょう。営業で大切なのは、顧客の思いを聞き出すことです。例えば、車検や修理をしに来た顧客に「今の車にどれくらい満足していますか」と聞いたとします。仮に「8 割くらい」と答えたのであれば、「なぜ残りの 2 割は満足ではないのか」と聞くと良いでしょう。「もっとレジャーで使いやすい車が良い」と返答されたら、「例えば、どういうレジャーか」と質問。「家族でキャンプに行きたい」と言われたら、「ということは、キャンプに最適な車があったらどうか」と聞き、「乗ってみたい」と回答を得てから、RV を紹介するといった流れです。

顧客は会話の中で使用シーンのイメージができていくため、RV の提案がスムーズに入ってくるのです。RV の機能を説明する際も、「こうした機能をキャンプで使ってみるとどうか」など、常に質問することを意識します。そうして、セールストークのほぼすべてに質問を入れて、思いを聞くことで、顧客の「買いたい」という気持ちを高めていくのです。

大切なのは顧客の思いを聞き出すこと

質問型営業が上手くできる 3 つの言葉

ただ、質問をし続けることは、難しいのではと考える方もいるでしょう。しかし、心配は無用です。先に述べた例を見ると、あるキーワードが頻繁に出てくることが分かります。それは「なぜ」「例えば」「ということは」の3 つです。「なぜ」で思いや行動の理由を聞きます。そして「例えば」で理由を深掘りして具体的な要因を聞き出します。その上で、「ということは」を用いて、結論を引き出します。

もちろん、事前に様々なトークスクリプトを考えたり、練習したりすることは必要ですが、この 3 つの言葉をうまく織り交ぜることで、誰でもスムーズに質問型営業を行うことができるようになるのです。

質問型営業が上手くできる 3 つの言葉

質問するとお役立ちの精神も芽生える

一方、質問型営業には営業する側の心理面にとっても大きなメリットがあります。それは、質問を繰り返して深掘りすることで、顧客の思いや困り事、欲求が、手に取るように分かるようになり、この顧客のために役立ちたいという「お役立ち」の精神が芽生えていくことです。つまり、"顧客に質問"して色々聞くことこそが、営業として純粋に持つべきお役立ちの精神を高めるための重要なポイントなのです。

「売ろう」とする営業と「役に立ちたい」とする営業では、やりがいは全く異なるでしょう。苦手だった営業も楽しくなるはずです。質問型営業は売り上げを伸ばすだけでなく、営業する側のやる気アップにもつながる一挙両得のツールと言えるでしょう。

今回のレポートは、米国人材教育会社の代理店においてセールスマン1000人以上の中で、 5年間累積業績1位を続け、そのメソッドを基に質問型営業を開発した、株式会社リアライズ代表取締役の青木毅氏に取材し、まとめました。青木氏は、研修などで約4万人の営業を変えた実績を持ち、高い評価を得ています。著書は『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』など多数。公式ホームページは「質問型営業」で検索!

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