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「話し方」を意識すれば繁盛店に!

"感じの良い店"になって集客とリピートを増やそう

ボデーショップにとって、新規顧客やリピート客を増やすことは大切な業務の一つです。では、そのために必要なことは何でしょうか。修理や整備の技術力や品ぞろえ、あるいは、店舗での様々なサービスなどは確かに重要でしょう。しかし、それと同等か、それ以上に大事なポイントがあります。それが「話し方」です。今回は、110万部を突破した本で、大ベストセラーである「人は話し方が9割」の著者である永松茂久氏に、顧客の心を掴む話し方の秘訣を聞きました。

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顧客は何をもってその店に任せるのか

ボデーショップにとって、修理や整備の技術力や丁寧な仕事は何よりも大事なことであり、職人としてレベルの高さをアピールする店舗は多いでしょう。もちろん、それらは自動車の修理や整備に携わっている以上、大前提であることは間違いありません。

しかし、ここで課題となるのが、そうした技術力の高さが、知識を持っていない多くの顧客には伝わりにくい可能性があることです。ホームページや対面の接客で訴求することもあると思いますが、ユーザーにとっては、技術がどの程度高いのか、他と比べてどうなのかを判断するのが難しいという場面もあるかもしれません。

では、顧客は何をもって「ここに自分の愛車を任せたい」と判断するのでしょうか。それはシンプルに、その店舗が「感じの良い店かどうか」ということです。そこで「感じが良い」と思ってもらえれば、顧客はその店舗が好きになり、リピートしてくれたり、周囲に紹介してくれたりする確率が高くなるのです。

「感じの良い」は実はキラーワード

「感じの良い店」とは何やらフワッとしていて抽象的だと思われるかもしれません。また、本当にそれが選ばれる条件になるのか不確かに思う気持ちもあるかもしれません。ですが、考えてみてください。人と人との付き合いでは、「感じの良い人」というのは、頭の良い人、仕事ができる人などよりも、最も好かれるキラーワードではないでしょうか。感じが良いだけで、また会いたくなり、人にも紹介したくなるというのが世の常、人の常です。それほど「感じが良い」というのは、実は何よりも大切なポイントなのです。例えば、他人に修理工場を紹介する時、「あそこは腕がいいよ」というより、「あそこは感じがいいよ」と勧めることの方が多いのではないでしょうか。

では、感じの良い店になるにはどうすればいいのでしょうか。そこで大切になるのが、フロントや工場の従業員の"話し方"です。この話し方さえ気を付ければ、店の好感度が上がり、リピートや紹介も一気に増えやすくなるのです。

「感じの良い」は実はキラーワード

顧客に安心感を与える話し方の鉄則とは

早速、どんな話し方がいいのかをみていきましょう。1つ目のポイントが、顧客に安心感を与える対応をすることです。事故車を初めて店に持ち込む場合、大半の顧客は不安で一杯です。接客では、まずはそうした不安を和らげることが重要です。どうすればいいかといえば、①笑顔で、②うなずき、③温かい言葉を掛けるの 3 つを実直に行うことです。最初に笑顔で「いらっしゃいませ、どうされましたか」と応対することで第一印象を良くします。そして、顧客が話す際にはうなずきながら聞くことで、「お客様のおっしゃっていることを受け入れていますよ」という姿勢を伝えます。さらに、事故の話になったら「それは大変でしたね。さぞかしつらい思いをされたのではないでしょうか」などと、聞くだけでなく、心のこもった言葉を返します。

顧客に安心感を与える話し方の鉄則とは

語尾を伸ばし、絵文字を思い浮かべる

その際、気持ちがより伝わりやすい言い方もあります。それは、「大変でしたねー」、あるいは良いことであれば「へー、それは良かったですねー」と、必要に応じて言葉の端々を多少伸ばし気味にすることです。また、携帯電話などでよく使う「絵文字」をイメージすることも有効です。つらいことなら「涙マーク」、楽しいことなら「ハートマーク」など思い浮かべると良いでしょう。これらを行うことで、言葉に気持ちが乗り、より相手に思いが伝わりやすくなります。そうして①~③を行うことで、顧客は「この人なら話ができる」と安心感を持つことにつながり、「感じの良い店」と思ってもらえる第一歩とすることができるのです。

語尾を伸ばし、絵文字を思い浮かべる

大事なのは「話すこと」より「聞くこと」

第一印象で顧客の心を掴んだら、次に意識したいのが、相手の話をひたすら「聞くこと」です。人は誰もが「自分のことを分かってほしい」「自分の言うことを聞いてほしい」と思っており、聞くことによって、相手の心は満たされていくからです。入庫した車をどの程度直すか、どうしたいのかはもちろんのこと、時間があれば普段の車の使い方など話を広げる質問をしても良いでしょう。また、誰でも話したがる鉄板ネタである「好きな食べ物」「出身地の話」「ペットの話」といったことも問いかけとしては有効です。そうしてたくさん話を聞けば聞くほど、「自分は受け入れられている」という思いが増していき、「感じの良い店」というイメージが強くなっていくのです。同時に、「顧客が何を求めているのか」「車をどうしたいのか」という大事なポイントが明確になるため、齟齬が無く、顧客の希望通りに直せることにもつながります。

このやり取りでもう一つ重要なことは、会話の中で顧客を「お客様」ではなく、「○○様」と名前で呼ぶことです。人は名前で呼ばれると「自分は大事されている」「受け入れられている」という気持ちになりやすいからです。

大事なのは「話すこと」より「聞くこと」

社長自らが実践し、社内に根付かせる

 ところで、感じの良い店になるための話し方は、どのように社内に浸透させていけば良いでしょうか。効果的なのは、朝礼や会議、あるいは普段の打ち合わせや会話の中で、社長自らが「笑顔」「うなずき」「温かい言葉」「ひたすら聞く」「名前で呼ぶ」を"実践"することです。当初は朝礼などで「10 分だけ実践する時間を設ける」という方法から始めてもいいでしょう。そうして、社長が率先して行うことで、従業員やエンジニアも自然とやってみようという雰囲気が醸成され、いつしか、店の習慣、文化として根付くようになります。それが接客に活かされることで、店が繁盛するのに最も重要な「感じの良い店」という評判を手に入れることができるのです。

永松茂久氏

プロフィール:株式会社人財育成JAPAN代表取締役。全国で多くの講演、セミナーを実施。若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ60万人に上る。著作業では2021年に『人は話し方が9割』が年間売り上げランキング1位を獲得(日販調べ、ビジネス書)。他に最近の『リーダーは話し方が9割』(右写真)も含め著書は多数に上り、全発行部数は累計330万部を突破。

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