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バインディング・アプローチで実践型の最強チームの仕組みを作る

社員の結束力が高い組織になって会社のビジョンを達成しよう

少人数の会社が多いボデーショップが、今後、成長したり、生き残りを図っていくためには、社員の力を結集して、目標に向けて一丸となって突き進む "助け合うチーム力"が必要です。今回は、社員の結束力を高める"バインディング・アプローチ"を独自に考案し、講演やコンサルティング、教育を通じて社会に広める活動に力を注ぐ、多摩大学客員教授の荻阪哲雄さんに、最強のチームの作り方をレクチャーしていただきました。


チーム力向上には共通の目標が必要「実践のビジョン」で方向付ける

社員の結束力を高めて目標を達成するバインディング・アプローチには、3段階のステップがあります。第1段階が「社員の進むべき方向を示すこと」、第2 段階が「その方向に向けて社員が助け合って仕事をすること」、第3段階が「(業績アップなど)成果を出して目標を達成すること」。このプロセスを社長と社員が一緒に踏むことによって、社員同士のつながりを強化し、会社に助け合う文化を作ることが狙いです。

まず、第1 段階で進むべき方向を示すのは、単に「協力し合おう」「まとまろう」といったかけ声だけではチーム力はアップせず、結束を高めるには、明確に方向付けする仕組みが必要だからです。では、何が進むべき方向になるかと言えば、それは社長と社員が決断する「実践のビジョン」です。実践のビジョンとは、ひと言でいえば、「未来の目的地」。米国のケネディ大統領がアポロ計画で宣言した「我々は10年以内に人間を月に送り、無事帰還させる」などが好例です。このように実践のビジョンは、期限と内容が実践的かつ具体的であることが重要です。

直需7 割、対応の速さ日本一...腹をくくり、方向を具体化する

荻阪さんによると、ボデーショップでは、(ケースa)「1年以内に今までの下請けの仕事から、直需7割、下請け3割の仕事のやり方へ変える」、(ケースb)「事故現場に迅速に駆け付け、実車を見て素早く修理方法を顧客に提示できる"対応スピード日本一"の会社に3 年以内になる」、(ケースc)「事故車に24 時間対応し、社員全員が『自動車救援士』の資格を取得して、顧客に絶対的な安心感を届けられる"自動車救援企業"に1年以内になる」などが、実践のビジョンの例となります。このように会社の特性に合わせ、自社ならではの実践のビジョンを作るのです。その際必要なのは、社長と社員が共に対話を行い、腹をくくってやり遂げる決断をすることです。

「やらない戦略」を決めれば"やること"が見えてくる

実践のビジョンが決まったら、次はその実現のために「やらない戦略」を決めます。やらない基準を決めれば、無駄を省くことができ、逆に人・モノ・金・時間を集中すべき「やること」が見えてくるからです。例えば、(ケースa)ならば、「得意領域を打ち出さない」がやらない戦略。代わりに、外国車であろうと、HV であろうと、「直需のニーズには全て対応」がやる戦略になります。(ケースb)で、「中~低価格の車はやらない」をやらない戦略とすれば、「高級車に特化」がやる戦略、(ケースc)で、「国産車はやらない」をやらない戦略にすれば、「輸入車の修理に特化」がやる戦略となります。

こうして決めた実践のビジョンとやらない戦略を"意思決定の優先基準"にして、仕事の仕組みに組み入れることが最重要です。結果、社長と社員の決断が速まり、顧客対応スピードや働き方の生産性を変えられるのです。

助け合えるフォーメーションを作るリーダーの役割を社員皆で担う

実践のビジョンとやらない戦略が決まれば、次はいよいよ第2 段階の社員が助け合って実践するフェーズです。助け合うとは、実践のビジョンを達成するために必要な役割を、それぞれの社員が担い、行動すること。バインディング・アプローチでは、それを誰もができる「7 つの役割」として提示しています。

①突破の役割:ビジョンの実現を決して諦めない、組織に明るさと壁を乗り越える力を与える役割。
②作戦の役割:ビジョン達成のための全体的なプランを組み立てる役割。
③継続の役割:作戦に基づき、それを形にした商品やサービス、提案に変えていく役割。
④共感の役割:一人ひとりを温かく見守り、話を聞き、目の前の相手を励ます役割。
⑤仲間の役割:社内外でビジョンを実現するための仲間を作っていく役割。
⑥アイデアの役割:目の前の仕事を進めるための具体案を出していく役割。
⑦リスクの役割:事業の進捗に気を配り、何か問題はないか、先回りして考えて危機に備える役割。

この7 つの中から、社員は自分が担えそうな役割を自発的に選び、「助け合えるフォーメーション」を組むわけです。一人一役ではなく、二役、三役を担っても構いませんし、途中で役割を入れ替わることも有効です。従来、こうした7 つの役割は、社長やリーダーが全て抱え込み、実質一人で行ってきました。バインディング・アプローチでは、その7 つの役割を個々の社員が担って、チーム全体でカバーします。こうして、ビジョンの実践に全社員が主体的に関わる体制を構築することが急務で、それが結束力、チーム力の向上につながるのです。( 7 つの役割の具体例は図を参照)

結果を常に組織で反省するチーム力向上と目標達成を同時に実現

そして、助け合えるフォーメーションによって、社員が結束してビジョンの達成に取り組み、第3 段階の成果へ帰することができます。十分な成果が得られたのであれば、さらに目標を高めるビジョンを打ち立てたり、別のビジョンを構想して実践するなど、次の「未来の目的地」を作って、バインディング・アプローチの新たなサイクルを回していきます。一方、成果が十分でない場合、原因と改善策を話し合う「反省の会議」を行い、結論にしたがって、また全社員で7 つの役割を担いながら、ビジョンの達成に再挑戦するのです。

バインディング・アプローチはチーム力を高めながら、会社のビジョンや目標も同時に達成する極めて実践的な組織開発の新手法です。実践例を参考に、自社の組織文化作りに役立ててみてはいかがでしょうか。

今回のレポートは、ビジョンの達成とチーム力、結束力の向上を同時に実現する実践手法「バインディング・アプローチ」を考案し、多摩大学で教えながら、日本企業への啓蒙、コンサルティングに取り組む、株式会社チェンジ・アーティスト代表取締役の荻阪哲雄さんに話をうかがい、まとめました。『結束力の強化書』『リーダーの言葉が届かない10の理由』『社員参謀』など、荻阪さんの著書は多数あります。

荻阪哲雄さんのバインディング・アプローチの入門書

『結束力の強化書』(ダイヤモンド社/1,543円・税込)

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