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元CA直伝の接客のコツで 信頼される店になろう

ボデーショップはサービス業であり、接客が大事なことは言うまでもありません。しかし、アプローチを間違えると、お客様の疑問や不満につながり、せっかく良い修理を施しても減点され、信頼を失うこと もあります。では、どうすればクレームを防ぎ、お客様が満足するような感じの良い接客ができるのでしょうか。今回は、元日本航空(JAL)の客室乗務員(CA)で、サービス訓練教官として1000人以上のCAを指導して社内評価では最上位のS評価を受け、現在は独立して接客マナー研修や社員教育で全国を飛び回る七條千恵美氏に、信頼され る店になるための接客のコツを教えてもらいます。

元CA直伝の接客のコツで信頼される店になろう

「大事にされている」を伝える接客 入り口では"感謝・歓迎・敬意"を示す

 接客の重要な点は、お客様に「この店に来て良かった(サービスを利用して良かった)と思っ てもらうこと」と「ファンになってもらうこと」です。これらを達成できれば接客は大成功といえます。では、どうすればお客様にそのような思いを抱いていただけるでしょうか。それは、お客様が従業員から「大事にしてもらっている」と思えるかどうかにかかっています。その気持ちが伝われば、お客様は「来てよかった」となり、ファンにもなっていただけるのです。

 しかし、接客中に「このお客様は大事な方」と従業員が心に思っているだけでは、何も伝わり ません。大切なのはそれをいかに表現するかです。そこでキーワードとなるのが、「感謝」「歓迎」「敬意」です。来店した入り口の段階で、この3つを過不足なく示す必要があります。

落ち込まれているお客様をどう迎えるか 必要なのは凛としつつ、柔らかな笑顔

 そのために、まずは笑顔で迎えることが重要です。ただし、ボデーショップでは相手の状況 を踏まえた笑顔が必要となります。事故後に来店されるお客様は落ち込まれ、不安を感じている方が大半でしょう。そうした中での満面の笑みはふさわしくありません。求められるのは、凛とした誠実な雰囲気を漂わせ、「全力でサポートする」という気持ちを伝え、安心してもらえる柔らかな笑顔です。「凛とした」というのは身だしなみで示します。つまり、髪型や服装を清潔感のあるきちんとした形にして、背筋を適度に伸ばすと凛とした態度になります。そのうえでほほ笑むくらいの笑顔を見せれば、安心感を与えることができます。

 さらに、お客様に向き合い、しっかりとアイコンタクトを取ります。そして、敬語で挨拶をして来店への感謝を伝えるのです。どのような姿勢や表情、言葉遣いになっているかはビデオを撮ったり、同僚に見てもらったりして確かめると良いでしょう。実は、CAはこれを徹底的に行い、訓練します。だからこそ、完成度の高い接客ができるのです。

元CA直伝の接客のコツで信頼される店になろう

フロント以外も会釈し歓迎の意を伝える アイコンタクトで相手の反応もチェック

お客様が来店した時は、対応するフロントだけでなく、デスクの事務員、工場のメカニック も、一度手を止めて挨拶をすると良いでしょう。声に出さなくても会釈をするだけでも構いません。そうして店全体で歓迎の意を伝えることで、お客様は「自分は温かく迎えられている」「大切にされている」と感じることができます。

 次に、お客様の話を聞き、修理などの説明をしている最中もアイコンタクトを取ることが重要 です。これは、誠実さを示すとともに、話に対する相手の反応を見るためです。事故車の修理の話は専門用語もあり、分かりづらい部分もあるでしょう。反応を見て、理解が追い付いていない様子であれば、再度丁寧に説明し、「何かご質問はございますか」と所々で質問を促すことも有効です。質問が出ない場合、「例えば、エンジンオイルとは何かといったことでもOK」と従業員の方からレベルを落とした質問例を提示しても良いです。お客様は「そんな基礎的なことを聞いてもいいのか」と考え、質問をするきっかけになります。

元CA直伝の接客のコツで信頼される店になろう

返答時に言いたい「はい」という言葉 感謝や謝罪は「何に対して」を付ける

 一方、会話中、お客様から何かを依頼されたり、聞かれたりした時、いの一番に返したい言葉 があります。それが「はい」という言葉です。「はい」ということで、「あなたの話をしっかり受け止めました」というサインを送ることができるからです。この言葉がないと、お客様は話が伝わっているのか不安になります。相手の話を受けてまずは「はい」と言ってから返答する癖を付けると良いでしょう。

 また、感謝を伝える際、毎回単に「ありがとうございました」と言うのではなく、「何に対して感謝しているのか」を伝えるとより効果的です。例えば、「本日はご来店いただき」や「説明を最後まで聞いていただき」など、お客様の具体的な行為を述べてから、「ありがとうございました」と言うと、相手は「分かってくれている」と感じます。

 逆にクレームを言われて謝罪する際も「何に対して」を付け足すことは有効です。「お待たせしてしまい」「納期が長くかかってしまい」など具体的な事由を言ってから、「申し訳ありませんでした」と謝ると、「この従業員は自分がどこに不満を持っているかを理解している」と相手に伝わり、気持ちが少し収まることにもつながります。

元CA直伝の接客のコツで信頼される店になろう

同僚、部下への指示や注意も敬語が基本 お客様は違和感を持たず安心できる

 接客時にはお客様の前で従業員同士や上司が部下に対して、指示を出し、時には注意をするこ ともあります。その際、気を付けたいのが、社内の会話であっても基本的には"敬語"で伝えあうということです。昨今、社会のハラスメントへの目が厳しくなる中、言葉遣いに違和感があると「この会社は大丈夫だろうか」と誤解を与えかねないからです。敬語であれば、お客様も疑念を持つことなく安心してその場にいることができます。

 大事な点は、常にお客様を一番に考え、「どういう態度でいれば安心するか」「どうすれば 大切に思っていることを伝えられるか」に配慮して行動することです。それが意識できれば、通常の接客もイレギュラーな対応も、適切に振る舞えるようになり、ファンとなり、リピートしてもらえ、知人に紹介までしてくれる可能性が高まるでしょう。

七條千恵美氏氏

プロフィール:プロフィール:同志社大学卒業後、日本航空に入社。お客様から賞賛され、際立った影響力を持つ客室乗務員として「Dream Skyward優秀賞」を受賞。皇室チャーターフライトのメンバーに抜擢された経験を持つ。客室教育訓練室のサービス教官を経て独立し、現在は株式会社GLITTER STAGEの代表取締役。著書は『接客1年生 お 客さまに信頼される50のコツ』(ダイヤモンド社)『接客の一流、二流、三流』(明日香出版社)など多数。

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