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季刊cognivision連載中の人気コラム「コグニビジョン・チェックアップレポート」を掲載中!

工場の“軒先”を活用して仕掛ける新サービス

スペースシェアビジネスで 副収入や集客につなげよう

売り上げや利益を少しでもアップさせるために、日々苦心されているボデーショップも多いと思います。そうした中、空いているスペースを他者に一時的に貸すだけで、副収入が得られたり、集客につなげられたりするサービスが、軒先株式会社が提供する「軒先ビジネス」などのスペースシェアビジネスです。費用負担ゼロで始められることがメリット。その他、他者とモノをシェアする発想をベースにどのような新事業が考えられるか、同社にアイデアを聞いてきました。


空いているスペースを簡単に貸し借り貸し手は副収入、借り手は店が開ける

他者とモノを共有する「シェアリングエコノミー」が時代のキーワードとなって市場が急速に広がっています。 そうした中、店舗の休業時間帯に空くスペースや駐車場を、個人や法人が 1 日~ 1 か月など一時的に貸し借りできるサービス「軒先ビジネス」を、10 年も前に業界に先駆けて始めたのが軒先株式会社です。貸す側は使っていないスペースを貸すことで副収入を得られること、 借りる側は低費用低リスクで簡単に物販店や教室を開けることが利点。貸す側は軒先ビジネスの Web サイトに会員登録し、スペースを登録するだけで貸し出しを始められ、借りる側は同じく会員登録し、パソコンやスマートフォンで希望のスペースに申し込みするだけで、簡単に借りることができます。その後、自宅や会社などの使っていない駐車場を一時的に駐車スペースとして貸し借りできる「軒先パーキング」や、夜間営業の飲食店が、昼間他者に厨房と客席を丸ごと貸し出す「軒先レストラン」 など新業態も展開しています。

現在、軒先ビジネスは全国に 2500 か所、軒先パーキングは 1 万台分、軒先レストランは 180 店が登録。例えばロードサイドのドラッグストアの駐車場を個人が借りてランチを提供するキッチンカーや八百屋を開いたり、 駅前や商店街の店先を借りて個人や法人が催事販売したり、販促のキャンペーンを行うなど、日々スペースが活発に貸し借りされているのです。

最もハードルが低いのは駐車場の登録八百屋やキッチンカーが集客手段になる

では、ボデーショップがこのスペースシェアビジネスを活用するなら、どのような方法があるでしょうか。まず、最もハードルが低い取り組みは、軒先ビジネスや軒先パーキングに貸す側として登録することです。近くに大きな工場やオフィス、学校や病院などの施設があれば、クルマで通う人たちの駐車需要を取り込めます。人通りや交通量が多い場所であれば、キッチンカーや八百屋の移動販売車などのニーズも掴めるでしょう。ランチや野菜を買うためにクルマで立ち寄った人に、ボデーショップのチラシを配布するなど、新規顧客の集客手段としても有効です。

軒先パーキングを営業のフックに活用 お客様とのつながりを保持するツールに

もう一つが、軒先パーキングをボデーショップの修理や整備、新車販売の営業をする時の"フック"として活 用することです。最初から自社のサービスを売り込むとお客様はやや引き気味になってしまうかもしれません。代わりに、「スマホで駐車場を予約して借りられる新しいサービス」「自宅に空いている駐車スペースがあれば副収入が得られる」などを売り文句に軒先パーキングを紹介すれば、お客様も関心を寄せ、営業がスムーズになる可能性も高くなります。軒先株式会社の負担で、500 円クーポンや 5%割引などのキャンペーンを行うことも可能。軒先パーキングでお客様とのつながりをキープし、 事故や故障など、いざという時に選んでいただける存在になることが狙いです。

協業で"カーピットシェアリング"を展開プロの技術者が教えるワークショップも

さらに有望なのが、カーオーナー様が愛車を整備、 チューンアップする場所として、例えば工場の一角と機材を貸し出す"カーピットシェアリング"の展開です。繁忙期は難しいでしょうが、比較的入庫車が少ない時期などに、クルマを本格的にチューンアップできる場所を提供すれば、マニア垂涎のスペースになることは容易に想像できます。プロのエンジニアが修理技術を伝授するワークショップをセットで開催することで、さらに付加価値を付けることも可能です。

現在、ガレージ付きの賃貸アパートがすぐに埋まるほど、趣味のクルマやバイクいじりを満喫したいニーズは大きくなっています。住宅街や郊外でも需要は見込め、地方のボデーショップにとっ ても、一考に値するシェアリングビジネスではないでしょうか。

オーナー同士が愛車をシェアリング料金の一部を徴収し、収入源にする

ボデーショップに修理や整備、新車購入を通じて関わっているオーナー同士が、それぞれの愛車を有料で貸し借りできるカーシェアリングサービスも、アイデアの一つ。現在、不特定多数の個人が広く愛車を貸し借りするサービスとしては「Anyca(エニカ)」がありますが、それをボデーショップのお客様同士のクローズドな中で行う新事業です。軽自動車のオーナーが外国車やミニバンを一時的に使いたいといったニーズを充足できる付加価値サービス。ボデーショップの顧客であれば貸しても良いというオーナーもいるでしょう。

今は、カーシェアリング専用の自動車損害保険もあり、導入すれば安心材料になります。貸し出しをきっかけに 整備する需要を取り込めたり、貸し出し料金の一部をボデーショップ側が徴収するなど、新たな収入源の道も開けます。賛同するボデーショップを集め、市や県、団体でスケールして行う手もあるでしょう。
世の中の人たちが「モノを所有しない」方向に加速する中で、ボデーショップでこうしたシェアリングの考えを 取り入れた事業を模索することも、今後は重要になってくるのではないでしょうか。

今回のレポートは、軒先株式会社代表取締役の西浦明子さん、事業開発部長の中村欣充さんに話を聞き、まとめました。同社は、レポートの中で紹介したビジネスも含めて、全国のボデーショップとの協業や連携を希望されています。軒先ビジネスや軒先パーキング、あるいはその他のシェアリングビジネスの相談は、コーポレートサイトの「お問い合わせ」か、03-6869-3111まで。

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