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お金をかけずに今すぐ取り組める

社員が気持ちよく働けて 元気で儲かる会社を目指そう

社長の大きな役割の一つは、「社員が気持ちよく働ける環境をいかに作るか」ではないでしょうか。特に中小企業にとっては人材こそが会社の生命線。社員のモチベーションが上がれば生産性が向上し、売り上げや利益のアップに直結します。今回は、数々の中小企業のニッチ・トップ化を支援してきた経営コンサルタントの酒井英之さんを取材。社員のやる気を引き出すための、ボデーショップの社長がお金をかけずに今すぐ取り組める言動・行動を紹介します。


問題の原因は全て自分にあると考える大切なのは"矢印の向き"を意識する習慣

社員が力を最大限に発揮するための環境作りにまず必要なのは、社長が日頃の言動や行動に注意を払うことです。例えば、業務で大きなミスが出たり、業績不振に陥った際、社長が部下に対して「お前たちのせいだ」と言えば、部下も「こんな環境を作った社長のせいだ」と反発することでしょう。逆に社長が「自分が甘かった」と言えば、部下も「私たちが至らなかった」と反省し、リカバリーしようと必死になります。

つまり、"矢印"を相手に向ければ、相手も矢印をこちらに向けてきますが、反対に矢印を自分に向ければ、相手も自分に向けるようになるわけです。何か問題が発生した時は、全て自分に原因があると考え、必ず矢印は自分に向けるようにする。これは社員同士、あるいは社員と管理職にも言えることで、こうした「矢印の向きを意識する習慣」を根付かせれば、問題解決も早く進むことが期待できます。

単に「もっとやる気を出せ!」は無意味社員の仕事の"成果"を共有する

単純に「もっとやる気を出せ!そうすれば成果が出る」と発破をかけるのも NG です。実際、それで社員のやる気が高まったケースは少ないのではないでしょうか。問題は順番が逆だと言うこと。すなわち、「やる気があるから成果が出る」のではなく、「成果が出たからやる気が出る」のが人の感情のセオリー。先に良い成果が出て手応えを実感し、さらにもっと手応えを感じたいから、やる気が出てくるのです。
つまり、社長がするべきは、良い成果が出ていることを社員に積極的に伝えること。ボデーショップであれば、技術者に「先日修理した車のオーナーが仕上がりをとても褒めていた」、フロントに「接客が丁寧で気持ちがいいと言っていた」など、社員たちの仕事が評価されていることを、どんなに小さなことでも漏らさずに朝礼や個人的な面談で日々言葉にすることが、社員のやる気を引き出すのです。

社員への声掛けが社内の一体感を生む社長の顔一つで社内の雰囲気が決まる

さらに、社長の役割として重要なのが、社員の一人ひとりにマメに声を掛けること。社長の声掛けは「あなたをいつも気に掛けている」という承認のメッセージです。「今担当している車の修理は順調?」「困っていることはない?」など仕事のことから、「家族は元気にしている?」「子供は楽しくサッカーをやっている?」などプライベートに関することまで、社長の方から日々、率先して声掛けを行うのです。
ポイントは、特定の社員ではなく、全ての社員に公平に声を掛けること。他の社員も自分と同様に声掛けされているのを見て、「社長は皆のことを気に掛けている。そんな社長のために全員で力を合わせて頑張ろう」と一体感が生まれます。

もう一つ大切なのが、社長が常に笑顔でいることです。ボデーショップのような小さな集団の雰囲気は社長の顔一つで決まります。社長が笑顔でいれば、社員も笑顔になり明るい会社に、社長が険しい顔をしていれば社内はピリピリしたムードになり、ショップの印象も悪くなります。社長の顔は、心掛け次第でパワーにもなり、リスクにもなるのです。

仕事をする上で最も大切なことは何か社員が判断する際の優先順位を決める

社員が円滑に仕事ができるように、方針やルールを決めておくことも重要です。その一つが、仕事をする上で何を最も大切にするか、優先順位を予め社長が定めておくこと。それが社員が迷ったり、物事を決めなければならない時の"道しるべ"になります。
例えば、「当社は地域で態度評価 No. 1 の会社になる」と決めれば、接客でも、仕事の姿勢でも、良い態度で臨むことが最優先事項となります。笑顔で丁寧にお客様と接すること、あるいは作業スペースを常にきれいに保ち、油汚れのない制服で作業することも、態度重視の実践例となるでしょう。態度を良くすることは、技術の有無に関わらず実行できるため、ベテランから若手まで取り組めることもポイントです。

一番困るのが「臨機応変に対応せよ」。そもそも道しるべがなければ、迷った時に対応することは困難です。「態度」以外でも、「感謝」や「丁寧さ」「優しさ」「スピード」「笑顔」など、それぞれの会社にあった最優先事項を決めておけば、社員は頭を余計に悩ませず、適切で迅速な行動を起こすことができるのです。

忙しくても常に「はい!よろこんで!」ポジティブワードでいつも元気な会社に

また、社員間のコミュニケーションを良好にしたいのであれば、決まった掛け声を決めておくことも一つの手です。他業種で言えば、居酒屋チェーンの「庄屋」が好例。庄屋の店内では、従業員が客だけでなく、同僚に対しても「ハイ!よろこんで!」と常に応じています。フロア係がオーダーを入れると厨房係はどんなに多忙でも「ハイ!よろこんで!」。厨房係ができた料理を「持って行って」と頼めば、忙しくてもフロア係は「ハイ!よろこんで!」。こうした前向きな言葉="ポジティブワード"を何を頼まれても常に言うだけで、「忙しい」「面倒」「煩わしい」といったネガティブな感情が不思議とポジティブに変わり、一丸となって仕事を進められるようになるのです。

庄屋を参考に、お客様や同僚から頼みごとをされたら、どんな時でも最初に「ありがとうございます!」「はい、すぐに!」と言うなど、掛け声のあり方は自由。社員から募集しても良いでしょう。それぞれのボデーショップで独自にポジティブワードを決めて言い続ければ、忙しい時、苦しい時でも、前向きなエネルギーが溢れ、いつも社員が元気な会社になることでしょう。

本レポートは、「人生送りバント」をモットーに、成果が出るまで現場に入り込んで粘り強く個別指導を行い、経営者・幹部のファンも多い、経営コンサルタントでV字経営研究所社長の酒井英之さんに話を聞いてまとめました。コンサルティングと社員研修ひと筋27年。著書(右)には、今回紹介したもの以外にも、社員や組織を活性化させる秘訣が数多く書かれています。
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