コグニマガジン

季刊cognivision連載中の人気コラム「コグニビジョン・チェックアップレポート」を掲載中!

数年後には高速道路や限定エリアで普及

目前に迫る自動運転社会に備え今できることから実践しよう

「人に代わって車自身が運転する」、いわゆる"自動運転車"がモビリティの次のスタンダードになると言われています。それは随分先と思いきや、その端緒はすでに始まり、10年後には様々なエリアで完全自動運転が実現しそうです。つまり、自動運転車は遠い将来の話ではなく、極めて近い未来の現実として、本格的な幕開けが迫っているのです。そうした社会の到来を前に、自動車の修理・整備に携わる方々の備えや今すべきことを、自動運転ビジネスに詳しい、自動運転ラボ発行人の下山哲平氏に話を聞き、レポートします

BCP対策になるオンライン接客平時も活用して顧客を取り込もう

手も目も離せる"レベル3"車が登場 制限のない完全自動運転車がゴール

自動運転は、レベル0からレベル5まで、6段階に分類されます(図1)。一般的には、システムが運転に関する全ての操作を実施し、人はハンズオフ・アイズオフ(手も目も離すこと)が許されるものの、すぐに制御できるように運転席に待機する必要がある「レベル3」以上が自動運転車と呼ばれます。法律上、公道でのレベル3の自動運転は可能になっており、既に一部の自動車メーカーから、レベル3の車種が発売されているのが現状です。
その次の段階であるレベル4になると、高速道路など特定の条件下では人がもはや運転席にいる必要は無く、車内で自由に過ごせるようになる"完全自動運転"ができるようになります。さらにレベル5になれば、「特定の条件下」という制限が外れ、どこの公道でも完全自動運転が可能になり、これが自動運転社会のゴールとなります。

【図1】手も目も離せる

国はあと数年で"完全自動"を目指す 2025 年以降は自動運転車が急拡大

日本政府が示しているロードマップでは、2025年には高速道路でのレベル4の実用化、物流での自動運転システムの導入と普及、限定地域での無人自動運転移動サービスの全国普及を実現するとしています。つまり、あと数年もすれば、高速道路では完全自動運転車が走り、自動運転トラックが荷物を運び、全国40カ所以上の限定エリアで、無人のロボットタクシーやロボットバスが人を乗せて移動する近未来の世界を現実化する方向で、国は動いているのです。

世界的にも自動運転車の普及は進展し、2030年にはレベル3が373万台、レベル4以上が1530万台、合計約1900万台の自動運転の新車が世の中に出回るという予測もあります(矢野経済研究所)。2025~30年にかけて公共交通、物流、自家用車などが同時多発的に発展し、完全自動運転車が加速度的に普及する未来は、もう目前に迫っているのです。

ネットにつながるシェアカーが当たり前 次の世代では自動運転車が日常の光景に

さらにその先にあるのが、全ての公道を完全自動運転車が縦横無尽に走るレベル5 の世界です。実は、自動運転と共に、導入が進むと見られているのが、自動車業界の新たな潮流であるConnected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取った「CASE」と呼ばれるトレンドです。すなわち全ての車両は、自動化、電動化と共にインターネットでつながって制御され、ユーザーも車を所有せず、他人とシェアしてサービスとして利用することが当たり前になる社会の到来です。そうなると、端末などで呼べば目の前に来て目的地まで移動できる自動運転車を多くの人が共有して使うようになります。その他、ロボットバスも運行し、荷物を運ぶ宅配ロボットカーやロボットタクシーも、街中のあちこちを走るのが日常の光景になると想定されます。

車は整備や修理のため自動で工場に来る 自動運転車を保有し運用する事業も有効

さて、自動運転社会が来た時、自動車修理・整備工場のビジネスはどのような形態になるのでしょうか。まず、コンピュータやAI などで制御されたあらゆる車両は、予め計算されたセンサー、モーターなどの電子部品やタイヤの交換時期になると、自動的に工場に来るようになると考えられます。日中は稼働し、夜間の時間帯にはまるでピットインするように工場前に車列を作るのが日常となるかもしれません。そうして集まる自動運転車や宅配ロボットカーなどを効率的に整備し、必要に応じて修理していくのが日課となる可能性があります。

また、地域密着性を活かし、利用者がシェアする自動運転車、宅配やタクシーのロボットカーを工場で数台、数十台所有し、地元の住民向けにサービスを展開することも有効でしょう。自動運転のため、車両を移動させるドライバーが不要となり、これであれば、自社で車両のメンテナンスをしながら運用するビジネスモデルが成り立ちます。こうして自動運転車などが出入りする拠点として工場をイメージすると、有効なビジネスやサービスも想定しやすくなるでしょう(図2)。

【図2】車は整備や修理のため自動で工場に来る自動運転車を保有し運用する事業も有効

今からできる自動運転社会に向けた施策 例えば"シェアリング"で方向性を掴む

そうした自動運転社会になるのは、数十年先かそれ以上かかるかもしれません。未来のことなので、予想とは異なる筋書きになることもあり得ます。目の前の業務で手一杯の中、今から何かを備えていくのは難しい点もあるでしょう。しかし、いざ自動運転社会が到来した時に、会社の事業を急に変えるのが困難なことも事実です。大切なのは、将来につながる現時点の最新のビジネスモデルに取り組み、知見やノウハウを蓄積し、変化が起こっても柔軟に対応する力を身に付けていくことです。

例えば、CASE の一つである「シェアリング」であれば、既に登場している様々な個人間(CtoC)のカーシェアサービスに、自社の保有車を試しに登録することはすぐにでもできます。カーシェアサービスを活用することで、シェアリングというビジネスがどういうものかを実体験するわけです。あるいは、自社で中古車を販売しているのであれば、そのうち複数の車両を活用して、地域住民向けに独自のシェアリングサービスを展開してみる手もあります(図3)。そうして、いずれ訪れる自動運転社会に向け、「今できること」に着手し、ビジネスのヒントや方向性を掴むことこそが、重要な一歩といえるでしょう。

【図3】今からできる自動運転社会に向けた施策例えば

今回のレポートは、株式会社ストロボの代表取締役社長で、自動運転に関する最新情報満載の専門メディア「自動運転ラボ」発行人の下山哲平氏に取材し、まとめました。自動運転の今を知りたい方は、ぜひ「自動運転ラボ」で検索し、アクセスしてください。また、自動運転関連ビジネスを詳しく解説した下山氏の著書『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド』(翔泳社)もお薦めです。

バックナンバー